これは私が学生時代、一人暮らしを始めたばかりの頃の話です。

地元を離れて、南関東の大学に通うため、一人暮らしを始めてから、最初の夏休みでした。

地元からの友人のいない、遠隔地の大学へ進学したのですが、幸いにも友人に恵まれ、その年の夏休みに友人たちと少し長い旅行を計画していました。

今回登場する友人をJとしておきましょう。

北海道出身の彼とはウマが合い、何かよくつるんでおりました。

旅行するにあたり、私もJも少し持ち合わせが足りず、親に無心するわけにもいかないので難儀しておりました。

すると、Jは部活のOBで金融関係の人がおり、その人はよく部活の後輩などに手を貸してくれると言いました。この人はSとしておきましょう。

旅行数日前の夜、私達はSさんの事務所だというビルの一室に伺いました。

気さくなお兄さんといった風情のSさんは、学生時分は金が掛かるからな、君みたいな話はよく聞くよ、と親しげな調子で話しかけてくれ、一枚の書類を渡してきました。

「一応仕事として貸すから、サインだけしてくれる?金利とかはすぐ返してくれれば掛からないようにしといたから」つまり、実質無利子だということで、私たちはいちにもなくサインをし、旅行を満喫することができました。

そして、私は翌月のバイトを増やし、無事に一月で完済できたのですが、このJはここからおかしくなりました。

もともと、ルーズなところのあるJは、2か月経ってもお金を返しておりませんでした。すると、時々Jの携帯から語気の荒い言葉が漏れ聞こえることが増え、部屋に遊びに行っても、家具や調度がたびたび減っているのが目立ちました。

そしてその年の終わり、Jは大学を辞め、地元へと帰って行きました。

後から聞いてみると、一定期間以内は無利子ということだったのですが、その後の金利は複利計算だったらしく、見る見る間にJの借金は膨らんでいたそうです。

それでも、実家の仕送りや節約で捻出したお金で利息は返していたようですが、年末、ついにやりくりが回らなくなってしまったようです。それ以来、私は手元にあるお金以上の買い物が怖くてできなくなりました。

車を買うときも、中古の安いものを一括で、ローンなどもってのほか。キャッシュカードを使うのもためらわれる状態です。

友人一人を失った、人生勉強でした。